稲本渡さんを迎えて 初の「アカシアコンサート」開催
演奏する稲本渡さん。ピアノは村上彩菜さん
1月31日・土曜日の午後、三丘会館でアカシアコンサートが開かれた。アカシアトークカフェではない初めての試み、「アカシアコンサート」だ。
出演はクラリネット奏者の稲本渡さん。名クラリネット奏者として名を馳せ、惜しまれながら2014年に亡くなられた稲本耕一さん(高15回)のご子息である。
「親族みんな三国出身。僕と兄だけ違って肩身の狭い思いをしてました(笑)」という。堺市親善アーティストも務めており、家が近所だった仲林信至同窓会長は「僕にとっては『近所のおっちゃん』でした」とも。コンサートは終始、親近感あふれる心地よい雰囲気に包まれた。
今回はテーブルのない「コンサート仕様」となった三丘会館ホール。81人が集まった。
お父さんの影響で「クラリネットとあまり変わらない身長だった頃」から練習を始め、6歳で父・兄(作曲家でピアニストでもある響さん)とともに初めてステージに立った。淀川工業高校に進み、吹奏楽部部長、そしてオーストリアに留学するなどキャリアを重ね、今ではアーティストとして、プロデューサーとして、また神戸女学院大学音楽学部准教授として幅広く活躍している。
「クラリネットがこわれちゃった──という曲がありますが…」と、言いながらクラリネットをどんどん分解していく稲本さん。(えっ…)と驚きながら見ていると、最後は片手の中に入りそうなほど短くなったクラリネットを吹いてみせる。クラリネットって5つに分割できるものだったんだ!とまずはびっくりさせられたところからクラリネットの基礎知識などを。
「クラリネットのリードの素材は南フランスのケーン(葦)がいいと言われている。決して淀川の葦ではなく…と言ったら東儀さんに怒られました。『なんてことを。われわれは2000年の昔から使っているのに』と」等々ジョークを合間にはさみながら演奏される名曲の数々。朝ドラのテーマ曲「おひさま〜大切なあなたへ」、「チャールダーシュ」、「剣の舞」、「情熱大陸」、「どうする家康のテーマ」、中島みゆきの「糸」…バラエティに富んだ選曲が楽しい。

お父さんの耕一さんは喉頭がんになり、クラリネットが吹けなくなるからと手術を拒み、その後一時は奇跡的に快癒したかと思えたがやがて再発、やむなく手術。喉頭を失い、クラリネットも吹けなくなった。
ところが渡さんにも「どうやって吹けるようになったのかわからない」独自の方法を編み出し、また吹けるようになった耕一さん。でもそれは長く続かなかった。危篤の知らせを聞いたときもレコーディング中で「どうしよう」と悩んだが、レコーディングを続けた──耕一さんが作曲した曲「エスペランサ」の演奏の前にはそんなことを話してくれた。エスペランサは「希望」という意味だ。
最後をしめくくった重厚な曲「クローバーの祈り」は稲本さんと同じく神戸女学院大学音楽学部准教授の八木澤教司さんの作曲。日本の音楽界について語り合う中で生まれた曲だそうだ。クローバーは神戸女学院の校章のモチーフであり、シンボルである。
今回のコンサートには吹奏楽部の生徒たちも参加。休憩時間に感想を聞いてみると「音色が分厚い」「楽しませ方が上手」「高音でもきれい」「音がまるい」「クラ1本でホールいっぱいに響くのがすごい」「レベルが違いすぎて…」。なるほど、日々部活で奮闘しているみなさんならではの率直な感想でしょうか。練習がんばってくださいね。
演奏のあとの質問(感想)コーナーでは「若い頃はグレン・ミラー、サッチモ、ベニー・グッドマンなどに夢中になってました」というジャズファン(高8回)の発言や、「40年近く前、お父様のコンサートに行って、とっても感動しました。私も吹奏楽をやってましたが、吹奏楽はクラシックに比べて高音域の曲が多いのはどうして、と思ってました」(高31回)という鋭い質問が出たりした。
「(チャールダーシュなどの曲の)超絶技巧すごいですね。手の指、ほんとに10本だけなんですか」(高7回)との質問には「実は15本あるんです」と稲本さんが返して会場爆笑。
終わったあとのロビーでは稲本さんとの交流を求める人の行列ができ、友と談笑する人の輪もそこここに。楽しい時間の後は誰かと語り合いたくなるものですよね。

稲本さんとみんなで記念撮影。お疲れさまでした!
(2026.2.23)
