三丘同窓会

検事総長・甲斐行夫さん(高30回)が母校で講演

  11月22日、母校体育館で検事総長・甲斐行夫さん(高30回)の在校生に向けた講演会が行われ、1〜3年生全員が体育館に集合、約1時間にわたって先輩・甲斐さんの話に耳を傾けた。2025年に創立130周年を迎える母校の記念事業の一環として開催されたものである。

 甲斐さんは英彰小学校、大浜中学校出身。1978年に母校を卒業。東京大学法学部を経て、84年検事任官。2019年高松高等検察庁検事長、20年福岡高等検察庁検事長、2021年東京高等検察庁検事長を歴任、そして昨年6月24日付で第50代検事総長に就任した。検察官約2700人、検察事務官約9000人を率いる検察庁のトップである。
 「検察庁で活躍する検察官には三国丘高校出身者もけっこういて、検察庁の中でもそれなりの勢力を占めています」とのこと。また、この1年で採用された検事71人のうち女性が35人、男性が36人でほぼ半々。昔は男の仕事と思われていたが、今はそうではないそうだ。

 在校時を振り返り「私が2年のとき、体育祭で1年に負けるという前代未聞の出来事があり、3年のときは、とにかく2年に勝ちたいとがんばった」そうで、在校時は勉強と体育祭のことしかしていなかったという。検事総長という肩書きから受けるイメージを裏切るような気さくで親しみやすい雰囲気の甲斐さんに、生徒たちもたちまち引き込まれたようだ。
 「なぜこの仕事を選んだかというと…正義を追求すると同時に、人情味を感じることも多かった。肌に合ってると思うようになった」という。

「検事に任官してからアメリカのミシガン大学ロースクールに留学もしました。英語がわからなくて苦労しました」と説明。

検事の仕事
 検事はどんな仕事をするのか。例を示しながらわかりやすく説明する。
 たとえば堺東駅のホームで刃物を振り回している男がいて、乗客が怪我をしたという事件が起きた。警察が駆けつけて取り押さえ、捕まえる。警察は被疑者や目撃者から話を聞き、刃物を鑑定したり、実況見分したりした後、48時間内に検察に送致しないといけない。48時間といってもぎりぎりというわけにもいかないので実質1日しかないそうだ。
 検察で「事件受理」すると、検事も被疑者を取り調べ、被害者からも話を聞く。防犯カメラをチェックしたり医者から怪我の状況も聞いたり。スマホやSNS、ネットの検索歴なども解析する。そうして起訴か不起訴かを決める。日本では起訴されたら99%は有罪だといわれる。それだけ絞り込んで起訴しているからだ。
 再犯防止策を考えることも重要だ。福祉などの関係機関との協力も必要になる。
 国会対応、法案を作成することもある。出向もある。
 検事の仕事は複雑で幅広い。

いろいろなことを勉強することが大切
 「検事さんって六法を全部覚えているんですか、と聞かれることがあるが、六法を全部覚えている人はいない。それよりいろいろなことを勉強しないといけない」と甲斐さん。
「私は文系だったので数Ⅲをやってない。ところが仕事で微分積分が必要になったことがある。数研出版の本を買って勉強しました。そんな本、見ただけでじんましんが出るんですが」と本を見せる甲斐さんに生徒たちもクスクス。
「こんなこと、学校出てから役に立つのかと思うこともあるかもしれないが、学校の勉強はあらゆることの基礎になる」と。

 司法試験の受験者はロースクール(法科大学院)発足時は多かったものの、近年減少傾向だそうで、できるだけ多くの人に検察庁の門をたたいてほしいと甲斐さん。また、法学部で学ぶことの意義として「論理的な見方ができる」ことをあげた。問題が起こったとき、論理を突き詰め、みんなが納得できるような解決を見つける。それはきっと社会の役にたつ、と。


講演を終え、拍手の中を藤井光正校長(左)とともに退場する甲斐さん

 
〔2023.11.27〕