三丘同窓会

三丘アカシアトークカフェ第13回開催/西口泰夫さん(定11回)「創造的活動人生」

参加者の質問を楽しそうに聞く西口さん

  2月4日(土)に三丘会館で開催された第13回アカシアトークカフェ。今回の講師は定時制11回で、京セラの代表取締役社長、会長を歴任された西口泰夫さん。絶えず考え、目標を持ち、課題をみつけ、その課題を解いていく、西口さんの「創造的活動人生」について、たっぷりと語ってもらいました。

 まずはその経歴を聞くだけでも驚きです。中学校卒業後、昼は働きながら府立堺工業高校の定時制へ。1年通ってから、三国丘高校定時制に編入。近畿大学二部、大阪教育大学大学院を経て、日本計算機に入社。そして31歳で京セラに入社し、43歳で役員、55歳で代表取締役社長に就任。これだけでも十分な驚きですが、西口さんがさらにすごいのはその後です。「技術経営をもっと論理化したい、研究したい」と64歳で学生に。同志社大学大学院の博士課程に進学し、技術経営のドクターを取得されます。その後、複数の企業の社外取締役を務め、71歳でシステムLSI会社「ソシオネクスト」を創業、さらに今は山田コンサルティンググループ(東証プライム上場)の会長も務められています。
 「今年で80歳になる」という西口さん。止まったら死んでしまう「回遊魚」だと家族からは呼ばれるのだとか。あまりの活躍ぶり、その「創造的活動」に、つい西口さんの年齢を忘れてしまう2時間でした。

常に課題をみつけ、解いていく

  そもそも西口さんが三国丘高校に編入されたのも、人生における目標達成には大学進学が必要(課題)であり、その解決のためだったそうです。常に課題をみつけ、それを解いていく創造的活動人生は、それぞれのステージで花を開かせていきます。
 京セラでは常に新規事業に携わり、電子機器には欠かせない水晶振動子、タクシーのレシートの印刷などに使われるサーマルプリントヘッドなどを、次々と商品化していきます。
 55歳で社長に就任された時、6000億円だった売上を、「在任中に1兆円に」と目標設定され、わずか3、4年でそれを1兆2000億円に押し上げます。
 富士通とパナソニックの2000人の半導体技術者を引き受けての操業となったソシオネクストも、経営を軌道に乗せ、無事に上場を果たします。
 今はコンサルティンググループの会長として、また、日本イノベーションネットワークの専務理事として、日本の中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組まれているそうです。
 そんな西口さんが、若き日に「いい意味でショックを受けた出来事」として紹介されたのが、アポロ11号でした。

なぜ11号なのか

 月面着陸に成功したアポロ11号が、なぜ11号なのか。それは、1号からずっとステップを踏んで、月面着陸という目標に向かって、1号、2号……と課題を確認し、それを解きながら作っていったから。そこに、11号に至るまでのグランドデザインを描ける人がいたから。西口さんはそう考え、「そのようなグランドデザインを描ける人になりたい」と思ったそうです。
 西口さんの話は、ご自身の半生にとどまらず、日本が抱える様々な問題についても広がっていきます。企業経営、教育、デジタル化、半導体業界……などなどです。それらの課題に通底するのは、「自ら考え、常に課題をみつけ、解決していくということが欠けている」ということのようです。
 一例として挙げられた、日本の半導体業界の衰退についてはこうでした。
 日本の半導体は大会社の一部門が担ってきた。だから、自社の製品開発部門から注文されたものを作るだけで、マーケティング能力がなかった。一方で、海外の半導体企業は、自分たちでマーケットを読んで、「必ずこういう方向に行くはずだ。だから、そのためには、基本設計はこうでないといけない」と考え、自分たちのリスクでもってそれを実際に作り、それを売りに行く。
 もし30年前の日本の半導体業界の中心に西口さんがいたら……、なんてことを想像したのは私だけでしょうか。

出てきた質問はやはり

  その後の質問コーナーも大いに盛り上がりました。やはり出てきたのは、西口さんの年齢を感じさせない活動量や、常に課題をみつける姿勢への「なぜ」でした。

──自分はぼーっとしながら仕事をやらされてきた。西口さんがそうじゃないのはなぜ?
西口 性格かもしれませんね。
──健康を維持する秘訣(ひけつ)は?
西口 70代で大病を2回しています。治れば治る。治らなければ死ぬ。そう思ってます。

 研究やビジネスに取り組まれたお話とはまた違った気楽な自己分析に、会場もどっと笑いました。  

 西口さんはご自身のことを「あまり後ろを見ることのない人間、絶えず前を向いて何かをやっている人間」と評されていました。そう言えば昨年、三丘会報に西口さんの記事を書かせてもらった時、代表的な肩書として「京セラ 元代表取締役社長・会長」と記載しようとしたところ、少し難色を示されました。こちらとしては、誰もが知る大企業ですから当然でした。それに対し西口さんは「それは過去の経歴だからね。今、何をやっているかの方が大事だから」とおっしゃり、「山田コンサルティンググループ会長」を追記させてもらいました。今回の講演を聴いて、あの時のやりとりに、改めて納得がいきました。
 そんな西口さんは「あと10年ぐらい今のような生き方をしていきたい」とおっしゃっていました。その時、90歳になる西口さんは、どんな創造的活動人生を送られているでしょうか。10年後に改めて、講師としてお招きしたいですね。


西口さんを中心に、恒例の記念写真
 
〔2023.4.26〕