「双翼の日の丸エンジニア」主人公の一人
ミノルタα-7000の開発メンバー・葛城衛さん(高14回)に脚光
昨年8月「双翼の日の丸エンジニア~ゼロ戦と飛燕の遺伝子は消えず」(戸津井康之著)というタイトルの書籍が出版された。
海軍戦闘機「ゼロ戦」設計者堀越二郎に学んだ高14回葛城衛(かつらぎ・まもる)さんは、世界初のオートフォーカス一眼レフカメラ「ミノルタα-7000」の開発プロジェクトの主要メンバーであった。
陸軍戦闘機「飛燕」の設計者土井武夫に学んだ百合草三佐雄(ゆりくさ・みさお)氏は、世界最速の称号を誇った大型バイク「カワサキZ1」の開発プロジェクトの主要メンバーだった。
この本は、それを知った著者の戸津井康之(とつい・やすゆき)氏が、二人の業績とともに二人の恩師、堀越二郎と土井武夫の功績を伝えるために書き表したノンフィクションである。
「ミノルタα-7000」は1985年に発表され、世界中のカメラファンを夢中にさせた画期的なカメラであり、2020年には国立科学博物館により重要科学技術史資料(未来技術遺産)にも登録された。
戸津井氏は、模型ショー会場で他とは一線を画す異彩を放つ「ゼロ戦」の模型を見て、制作者の葛城さんに話を聞いたところ、葛城さんが堀越二郎に学んだこと、また有名な「ミノルタα-7000」の開発メンバーだったことを知り、2015年に産経新聞に葛城さんについての連載コラムを執筆した。そのことについては三丘会報68号に掲載されている。
http://sankyuu.sakura.ne.jp/topics/2015topics/kou14katsuragi.html
戸津井氏は葛城さんとの出会いの2年後、日本における航空機開発の現状について聞くために、川崎重工業の元エンジニア百合草氏に会った。そのときに、氏が、陸軍戦闘機「飛燕」の設計者であり堀越と東京大学工学部航空学科の同級生だった土井武夫に学んだことや、モンスターマシン「カワサキZ1」の開発に携わっていたことを知り驚く。
敗戦後、航空禁止令が出され、国産の航空機の開発は途絶えたかに見えたが、土井、堀越、二人の航空技術者の教えが、航空機からオートバイ、カメラへと姿を変えながらも、いずれもセンセーショナルな世界デビューを果たしていたのだった。そのことを書き残したいと、戸津井氏は勤めていた新聞社を辞め、取材と執筆にエネルギーを傾注したと述べている。
本書では葛城さん、百合草氏、二人のそれぞれの生い立ちから、恩師との出会い、新製品の開発秘話などが詳しく述べられている。
「双翼の日の丸エンジニア~ゼロ戦と飛燕の遺伝子は消えず」
戸津井康之(著)
2021年08年05日発売 学研プラス 発行
四六判 384ページ 定価1980円 Kindle版 1881円
インターネットや書店での予約で購入可能です。