「地方の時代」映像祭で奨励賞受賞/定時制放送研究会
ベトナム人留学生とともに。左から3人目が森脇健斗さん、その右に山條泰史さん、若月宇宙さん。
母校定時制課程の放送研究会が制作した映像作品「これからのダイバーシティのゆくえとは〜定時制高校生の探究〜」が第40回「地方の時代」映像祭の高校生部門で奨励賞を受賞、2020年11月14日に関西大学千里山キャンパスで贈賞式があった。
「地方の時代」映像祭は1980年に発足、翌年から始まった「映像コンクール」には毎年、全国から映像作品が寄せられてきた。放送局部門、ケーブルテレビ部門、市民・学生・自治体部門、高校生部門があり、高校生部門には今回20作品の応募があった。定時制高校の受賞は同映像祭ではじめてのことという。
インタビュー重ねた力作
受賞作品は、外国人の労働問題をテーマとするもので、2018年に開催された「堺・アセアンウィーク」会場(堺市役所前)から始まり、ベトナム人留学生や殿馬場中学校夜間学級で日本語を学んだネパールや中国の人たちに話を聞き、さらにベトナム人実習生を雇用している店や日本語学校で取材、大学の研究者にもインタビューして、その実態を探っていく。途中、「定時制高校に日本語教育の専攻科設立を」という自分たちの提言も盛り込んだ。ラストシーンは取材に応じたベトナム人留学生が開いてくれたというホームパーティーのなごやかな風景。「これからの日本は外国籍の人と共に過ごせられる豊かなダイバーシティな国となっていく努力が必要と思います」との言葉で締めくくられている。
3人の部員のうち、若月宇宙(そら)さん(3年)が主に聞き手を務め、山條泰史さん(3年)は撮影、森脇健斗さん(2年)は照明などを担当、全員アルバイトと学業で多忙な中、2019年10月に完成させた。24分30秒の作品。(下の画像はいずれも「これからのダイバーシティのゆくえとは」から)
3人は1年生の時に、全日制社会科研究部と「堺の歴史フィールドワーク」で一緒に取材した。鉄砲館、打刃物製造現場、さかい利晶の杜や石津川の注染和晒など。また堺学検定も一緒に受験した。
「今回の受賞はこれまでの社会科研究部との合同取材で得たノウハウが大きく、生徒の力となったと思います。社会科研究部がこれまで制作した映像番組はお手本として非常に参考になりました。地道な取材を重ねる中で、生徒は映像にメッセージを込めた形に仕上げました」と、顧問の川端祥次(やすつぐ)教諭は語る。
次作は定時制70周年に向けて
放送研究会は川端教諭が着任した2016年に発足。この年に制作した「堺 百舌鳥古墳群 探訪」がさっそく大阪府高等学校定時制通信制生徒秋季発表大会の放送の部で府教育委員会賞を受賞した。翌2017年には部員が被災者のもとを訪れて直接取材したドキュメンタリー「堺大空襲とは」を制作。この作品は同年11月の文化祭で上映したほか、サンスクエア堺で行われた中高生による歴史研究発表会「日本と世界が出会うまち・堺2017」(堺市と大阪大学共催)で発表、特別賞・堺ユネスコ協会賞を受賞した。さらに2019年の「日本と世界が出会うまち・堺2019」では「渡日する外国人との共生とは」を発表。2度目の堺ユネスコ協会賞を受賞した(写真)。そして、今回の受賞。放送研究会の快進撃が続いている。昨年はコロナ禍のため「世界と出会うまち 堺2020」は中止となった。アメリカのBLM運動から触発され、堺の舳松同和地区の研究発表を考えていて、エントリーもしていたのに残念なことになった。普段の活動もほとんどできなかったという。だが本年、2021年には定時制創立70周年記念式典が行われる予定だ。その場で公開することを目的に、定時制卒業生や関わった人々を取材したドキュメンタリー番組の制作を企画しているということなので、今から楽しみである。
(2021.1.5)