権代美重子さん(高20回)の著書「日本のお弁当文化」が好評
書評の一部を抜粋すると──
エッセイストの平松洋子氏「一食をまかなう小さな箱。その内部に詰まっている多様な日本文化を、本書は米ひと粒見逃さぬ目配りを効かせて解き明かす」(2020年05月31日付東京新聞)
ノンフィクション作家・与那原恵氏「自然の恵みをもたらす神への信仰心、お弁当を分け合うことで育まれる人とのつながり、弁当箱に見られる知恵や美的造形など、さまざまな角度から探求した。丁寧な語り口、オールカラーの図版を多数掲載した本書は、幕の内弁当のように美しい」(2020年06月13日付日本経済新聞)
作家・宮部みゆき氏「現代のキャラ弁や弁当男子の話題にも触れて、まさに幕の内弁当のように充実した美味しい一冊になっている」(2020年06月28日付読売新聞)
この本を一読した印象は読みやすさと美しさ。とかくこのような膨大な資料と取材に基づく研究書は、学術語やカタカナ語を並べがちなものだが、よく使われるようになってきたカタカナ語にも( )内に日本語の説明を付け加えてより明確にし、やや難しいと思われる漢字にはふりがなが丁寧に付けられてある。引用されている豊富な写真資料はカラー印刷で非常に見やすい。読者に分かりやすく伝えようとする著者の心遣いと美意識が感じられる。
副題の<智恵と美意識の小宇宙>そして「お弁当が人と人を結ぶコミュニケーションツール」という表現がすべてを物語っている。
日本の農業を中心に林業・漁業とあらゆる生活様式の歴史から、現代のキャラ弁、宅配食やハラール食に至るまで詳しくひもといて解説する文化論。弁当の食べる中身だけではなく、駅弁・お花見・芝居見物そして美しく機能的な弁当箱の文化とも切り離せないことにも着目している。
弁当にまつわる歴史だけではなく、第7章<社会の変化とお弁当>では「高齢化の急速な進展、核家族化、働く女性の増加など、著しいライフスタイルの変化のなかで、お弁当は社会的役割を担うようになりました。また、ICT(Information and Communication Technology:コンピューターを利活用した情報通信技術)の進歩は、お弁当の新たな可能性を広げつつあります」と今後の弁当の役割についても言及してしめくくっている。
今では日本の弁当の文化が海外でも普及し、"BENTO" が世界共通語になりつつあるが、マンガやアニメのお弁当シーンへの関心がBENTO人気への火付け役だったとのことで、まさにアニメとBENTOは "COOL JAPAN" の代表格と言えそうだ。
また同書の出版に際しては原稿の段階から、同じ高20回の米澤茂さん(元筑波大学大学院教授・北九州市立大学名誉教授)の力添えがあったこともあとがきで紹介されている。
権代美重子(ごんだい みえこ)さん
日本女子大学卒業、立教大学大学院修了。日本航空(株)国際線客室乗務員・文化事業部講師を経て、ヒューマン・エデュケーション・サービス設立。1997年より(財)日本交通公社嘱託講師、国土交通省・観光庁・自治体の観光振興アドバイザーや委員を務める。2009年より横浜商科大学、文教大学、高崎経済大学の兼任講師(ホスピタリティ論、アーバンツーリズム、ライカビリティの心理と実践、他)。
著書に「新現代観光総論」(共著、学文社、2019)がある。
(2020.7.29)