全日本学生音楽コンクール・チェロ部門で一位/高65回・伊石昂平さん
2015年の同窓会総会に参加した人なら、第二部のゲストとして華麗な演奏を披露してくれた「Merci(メルシー)」という名のアンサンブルをご記憶ではないだろうか。このMerciの一員としてチェロを弾いていたのが伊石さんだ。
伊石さんは母校から神戸大学文学部に進み、卒業後に東京芸大大学院に進んだという、チェロ奏者としては異色の経歴の持ち主である。
音楽系大学出身の母・仁美さんの影響で、4歳でチェロを始め、母校在学中にコンクールで受賞も果たしている。と書くと、順風満帆のように思えるが、そうではなかった。学業も優秀だったが故に、中学生の頃から勉強とチェロの両立で悩み続ける。そして、音楽系の学校ではなく母校に進学。これを機に、一時はチェロの道をあきらめたというのだ。
「高校1年生のときにはチェロをほとんど離れているような状況でした。部活として弦楽合奏団に所属することでチェロとの関係を辛うじて繋ぎ止められた」という。
しかし、弦楽合奏団での経験が刺激となった。周囲は自分と違ってほとんど初心者。だが、みんなとても真剣で、音楽が好きで、楽しんでいる。その姿を見ているうち、さめかけていた音楽への情熱、チェロへの思いがふたたびよみがえってきた。2年生の頃からコンクールにもまたチャレンジし始める。
高校3年で第12回泉の森ジュニアチェロコンクール高校生の部・金賞。大学では西洋史を専攻しつつチェロも続けた。大学1年で第67回全日本学生音楽コンクールチェロ部門大学の部入賞。そして昨年、東京芸大大学院に入学、今年、ついに栄冠を手にした。音楽を志す学生の登竜門として知られる同コンクールでの一位。
「有名なコンクールの優勝という肩書きを背負ってこれから活動していく。その名に恥じないような演奏をしなければならないという責任で、身の引き締まる思いです」と謙虚に語る。
現在、大学院の2年在学中で、後期博士課程をめざす。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、近現代ではソ連時代に活躍したショスタコーヴィチだとか。神戸大学ではソ連の歴史や文化を学んだそうで、今後はそうした強みを生かした活動が期待できそうだ。
弦楽合奏団で活動していた頃を振り返り「練習環境が十分というわけではないけど、指導者の先生も頻繁にいらっしゃって、充実した部活でした。高校で弦楽合奏の部活があるところは少ないし、貴重な存在。僕もここ数年高校には行っていないので、久し振りに行ってお役に立てたらいいですね」と語ってくれた。
下の写真は2015年6月、三丘同窓会総会会場で。右端が伊石さん。
(2018.12.24)