三丘同窓会

高30回・中谷彰宏氏から母校への寄贈図書、100冊を超える
 いま若い世代の注目を集めている最もトレンディな作家といえば中谷彰宏氏(高30)でしょう。中谷彰宏氏は、早稲田大学演劇科を卒業して博報堂に入り、CMプランナーとして8年間在籍した後、フリーとなり、俳優として活躍する傍ら多くのエッセイや小説を世に送り出しました。特に恋愛エッセイ・小説は、若い女性から圧倒的な人気をえています。
 同氏から毎年多数の著書が母校に寄贈され、すでに100冊を超える著書が資料室(旧三丘会館)におさめられています。その中に、三国丘高校時代の想い出をつづった短編小説があるのをご存知でしょうか。著書「本当の君に会いたい」(平成6年初版)の末尾にある「自伝小説・五時間目の授業」がそれ。
『僕は高校時代、短歌部だった。部の名前は赤倉短歌会。…』で始まるその小説は、変人奇人とも称された伝説の歌人教師・山本初枝さん(故人・昭和23年10月~59年3月母校在職)を中心に同期の友人や先生が実名で登場、当時の教室の雰囲気や恋に胸躍らせる若者達を巧みに描いています。ぜひご一読下さい。

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赤倉短歌会には大きく分けて二つの作風がある。
恋の喜びを歌う派と、恋の哀しみを歌う派だ。
なんのことはない、恋人がいる者と恋人がいない者がいたというそれだけの、なんともわかりやすい違いだ。
陸上部の谷君は、恋の喜びを歌う派だ。
もちろん、僕は、恋の哀しみを歌う派の代表だ。
批評の天才甲斐君もまた、恋の哀しみを歌う派だった。
だから、甲斐君は恋の喜びをのみ賛美する歌については、「のろけ派」と称して手厳しかった。
(中 略)
恋の喜び派は、恋の哀しみ派に対して、めそめそするのではなく、短歌はもっと人生の喜び、美しさを高らかに歌いあげるべきであると主張した。
それに対し、恋の哀しみ派は、恋の喜び派の歌には深みがないと一蹴した。

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<中谷彰宏著・自伝小説「五時間目の授業」の1節から>
(2003.1.31)