第一部 ゲスト講演・櫻井賢さん(高39回)「マッサン」の舞台裏を語る

本年度年次総会は6月28日午前11時から、堺駅前のホテル・アゴーラリージェンシー堺において開催された。
今回のゲストスピーカーはNHKのチーフプロデューサーで朝ドラ「マッサン」の制作統括にあたった櫻井賢氏(高39回)。
「マッサン」はニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝とその妻リタをモデルにしたドラマで昨秋~今春に放映されたばかり。会場は同期・高39回の仲間32人を含む200人超の参加者でぎっしり。櫻井氏も「ものすごく緊張してます」と言いつつも、おもしろおかしく「『マッサン』の舞台裏」を語った。
高校時代は「レギュラーになったらもてるかも」という動機でハンドボール部に所属。そして「『野生の王国』が好きでイルカとともに暮らすのがあこがれだった」だけで大阪大学理学部生物科学科に入り、アメリカ留学もして大学院にも行ったのにある日「やっぱり映画監督や」と進路変更。「むちゃくちゃですね」「母親が泣いてましたわ」という櫻井氏。ちなみにその母親・櫻井園子さん(高8回)もこの日参加されていた。
しかし、周囲に反対されながらもNHKに採用され「ドラマ部」に。「いってみればパシリのような」ところから徐々にプロデューサーへの階段を上がっていく。
そして、「朝ドラをやってみないか」との話があったのが2012年5月。

朝ドラは「関わってから3回くらい誕生日を迎える」という長丁場。脚本づくりに1年半、事前取材に1年、そして放映期間は半年。半年間、中だるみもなく視聴者をひきつけなければならない。そのためには「国境」が必要ではないかと考え始め、あれこれ考えていたころ、たまたま入った店に置いてあったパンフレットでニッカの創業者・竹鶴夫妻のことを知る。大阪にいたこと、妻のリタさんの数奇な人生。ドラマにできそうだとひらめく。しかし、やるとなるとロケ地はスコットランド、北海道、広島、大阪に及ぶ。「これはだめだろうと思いながら企画を出したところ、採用されて自分で驚きました」という。そこから、異例の朝ドラ制作の苦労が──。
ロケ地が何カ所にも分かれているため、いったんセットを造ると、そのセットを使うシーンはまとめて撮らねばならない、という「地獄のロケ押し」。また、ニッカ、サントリーという実在するライバル同士の企業が関わるドラマ。事前に赴いたところ両社から企画には難色を示されたが、押し切って制作。「民放では絶対できない、NHKだからこそできたドラマ」だった。
また、エリー役のシャーロット・ケイト・フォックスについては、とにかくオーディションでの演技力が群を抜いていた。当初はハーフタレントでもいいかと思っていたそうだが、実際にはまったく日本語を読めない・話せない外国人がヒロインに決定、そのことが結果的によかったと振り返る。「現場でのコミュニケーションにひとつの『壁』がある。これが、今回のドラマをやるということなんだ、と思った」と。
講演は時に脱線しつつ、最後は時間が足りなくて駆け足という状態だったが、参加者は大満足。大きな拍手がわいた。
