三丘同窓会

「合唱団かえで」がテレコーラス・コンクールで連続受賞

 昨年からのコロナ禍で、多くの行事が中止に追い込まれているが、中でも合唱はクラスターが起きやすいとして、集まって練習することが難しい状況になっている。
 そんな中、母校音楽部OB・OGを中心に結成された合唱団かえでがテレコーラスにチャレンジして、コンクールで連続受賞するなど素晴らしい成果を上げている。

 テレコーラス・プロジェクトは大阪音楽大学学長の本山秀毅氏らが中心となって立ち上げたプロジェクトで、離れた場所で一人一人が歌った音源を集約し、それをミキシングしたものを一つの作品として創り上げる合唱の新しい試みに光を当てる企画である。「テレコン」(テレコーラス・コンクール)や「テレフェス」(テレコーラス・フェスティバル)などが開催された。


第1回テレコン“とにかく好き!部門”第3位になった「心の瞳」の1シーン
 

 テレコン第1回は昨年5月にエントリーが始まり、海外からも含め110組の合唱グループから158エントリーもの参加があった。合唱団かえでは「心の瞳」を歌い、視聴者が投票する一般賞・“とにかく好き!部門”で第3位となった。

 半年後の11月には第2回テレコンが開催され、今年3月の結果発表で、合唱団かえでの「Journey to Harmony」はその合唱の高いクオリティーとパワー、高いレベルの編集が評価され審査員賞・佐藤賞(作曲家の佐藤賢太郎氏による選出)の1位と一般賞・音楽性部門の3位に、中岡(河中)志穂さん(高63回)が主演女優を務めたもう1曲の「『アタックNo.1』のテーマ」は、ばかばかしいことに真面目に取り組んで、人を楽しませることに価値を見いだしていると審査員賞・橋本賞(アニメーション監督の橋本昌和氏による選出)の3位と一般賞・エンタメ性部門の1位に選ばれるという快挙を成し遂げた。


第2回テレコンでは「Journey to Harmony」が審査員賞・佐藤賞1位と一般賞・音楽性部門の3位に


同じく第2回テレコンで審査員賞・橋本賞3位と一般賞・エンタメ性部門の1位になった「『アタックNo.1』のテーマ」

遠くに住む団員も参加できた!

 合唱団かえでがテレコーラスに取り組むきっかけとなったのは、指揮者の天川雅俊さん(高55回)がこの企画の発起人である本山秀毅氏と以前から交流があり、その趣旨に賛同したことだった。団員に呼びかけたところ、「面白そう」と食いついた団員が多かったため、団として取り組むことになった。

 ピアニストの田所千佳さん(高56回)らによる伴奏とパートごとのお手本の歌が入ったものが用意され、それをイヤホンで聞きながら各自が一人で歌い、録音する。録音と動画撮影は別々に行う。歌うだけで、動画に参加していないメンバーもいる。
 実際にやってみると、録音するときにいろんな音――電車の音や楽譜をめくる音など――が入ってきて静かな環境を作ることや、思いっきり歌うことなどが難しかったこともあり、全員が参加したわけではないが、引っ越して関西を離れている団員が参加できたことなど思わぬ収穫もあった。

 音声や動画のファイルは、オンラインでデータを保存・共有できるサービスのひとつMicrosoft OneDriveを使ってやりとり。これは以前から使っていたので、問題はなかった。音声をまとめるのは天川さんの役割で、パソコンのソフトで編集を行うのは今回初めてだったため、コンピュータに詳しい京俊介さん(高53回)と2人で模索しながら習得した。動画編集は別のメンバー。以前から得意だった人がいたとのことだ。

認められたトータルでの「魅せ方」

 一般的なコンクールなどでは都道府県単位や地方単位で行われるものが多いが、今回のテレコンは海外からのエントリーもあるなどボーダーレスであり、今回の受賞で合唱団かえでの知名度が一気に全国区になったことが素直にうれしいと天川さんは語っている。
 また歌唱表現だけでなく、演出面なども含めたトータルでの「魅せ方」も含めて評価される機会だったため、十数年にわたって団員一同で磨き続けてきた演出のスキルも認められて報われた思いがするとのことだ。

 今年の4月からはオンライン会議ができるZoomを使った練習も始めた。参考資料を画面共有しながら学んだり、一人一人が事前録音したものを聞いて天川さんやボイストレーナーの般若(森川)なつみさん(高56回)が指導したりすることで、各自の課題や解決の方向性が今まで以上に理解できると団員には好評だ。

パンデミック・レガシーとして残したい

 本山さんたちは「その新たな形を生み出す力を、現在の困難からの回避のためだけでなく、そこから得られる『個人スキルの向上』『新たな表現の方法』や「演奏団体の交流」などをアフターコロナの世界でも活用できる価値、いわば『パンデミック・レガシー』として残そうというのが今回の『テレコーラス・プロジェクト』の目指すものです」と言う。天川さんも「いつも当たり前に行ってきたことができなくなり、やむを得ず選択した代替手段の中で、思わぬ気付きや学びがあったりする。まだ慣れないことだらけだが、臨機応変に活動スタイルを変えつつ、かえでの音楽を育んでいきたい」と語る。

 かえでのメンバーの一人はテレコーラスに取り組んで「完成した音楽を初めて聴いたときは、『みんなとつながれているんだ』そんな安心感を抱いた」と話している。

 合唱団かえでの次回演奏会は2022年5月8日に開催予定。演奏とともに舞台演出も楽しみに待たれる。

 
(2021.6.11)