三丘同窓会

三丘アカシアトークカフェ第11回「みんなでつくる未来の泉北レモンの街」開催
講師は苅谷由佳さん(高34回)


 第11回三丘アカシアトークカフェ「みんなでつくる未来の泉北レモンの街」は5月21日(土)午後2時30分から、いつものように三丘会館2階ホールで開催された。
 今回の講師は一般社団法人「泉北レモンの街ストーリー」代表理事の苅谷由佳さん(高34回)。泉北ニュータウンをレモンの街にしようという魅力的なプランで注目され、テレビや新聞、雑誌などのメディアにもたびたび登場、レモンを使った特産品も次々生まれており、いまや地元では知らない人はいない…かもしれない苅谷さん。「泉北レモンの街ストーリー」の誕生から今日まで、そして未来に向けたお話に、参加者40人(うちオンライン9人)が耳を傾けた。

 堺市南区にある泉北ニュータウンは堺市南部の丘陵地を開発してできたニュータウン。1967年のまちびらきから50年以上が経過するが、市内の他地区と異なりゼロから始まり、短期間に形成された街の特性ゆえか住民運動やサークル活動が活発なところだ。高齢化が進んでいるが、住民たちは積極的にまちづくりに関わってきたという自負が強い。ところが、苅谷さんはそうしたニュータウンはえぬきの世代でないところが興味深い。

各地を転々として泉北ニュータウンに・・・両親の家の庭に大きなレモンの木が

 「私は榎小学校から三国丘中学、そして母校、と進みました。堺東の近く、街中で育ったんです。結婚して各地を転々としたあと、17年前に堺に戻ってきました」。 両親が建てた家のある泉北ニュータウンに住むことになったのだ。苅谷さんには、泉北ニュータウンは新鮮な驚きに満ちた街だった。

「泉北には土地がたくさんある。学校や園も、市街地では考えられないほど広いんです。個人宅も」。
 そして、家の庭には、もともと実のなるものを好んで植え、いまも菜園をつくる父親が植えたレモンの木が大きく育ち、毎年数百個の実をつけていた。家族では消費できないほどだ。こんなにたくさん実るなんて?!

 泉北ニュータウンの近くの別所地区、さらに足を伸ばして隣の和泉市南部はミカン農家が多い。和泉市は大阪府下でも有名なミカンの産地だ。ミカンもレモンも同じかんきつ類。
「うちのレモンは例外じゃなかった。このあたりは昔からかんきつ類の栽培に適した土地だったんだ」と、思いを強くする。

泉北のおみやげって何だろう?

 すっかり泉北の住民として、この街への愛着を深めていった苅谷さんは、友人たちに会ったときに「これ、泉北のおみやげ」と気軽に手渡せるものがあればいいなと思い始めた。堺といえば包丁、自転車など昔から知られた特産品はある。でも、泉北のおみやげとしては「ちょっと違う」と思った。

 2014年、堺市ニュータウン再生室(現在の泉北ニューデザイン推進室)が来るべき泉北ニュータウン50周年(2017年)に向けて住民参加型のプロジェクト「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」を立ちあげ、参加者を募った。苅谷さんはこれに参加する。実はこの頃、すでに苅谷さんの中で「泉北レモンの街ストーリー」の構想はだいたいできていたのだ。
 2015年7月、プレゼンをしたところ、たちまち13人が賛同、「泉北をレモンの街にしよう」という活動がスタートした。折しも塩レモンがブームになり、皮まで安心して使える国産レモンの良さが見直され始めた時期でもあった。この年9月、初めてのレモンの苗木を植樹した。

 めざすのは泉北の街のあちこちにレモンの木が植わっている風景。そのレモンで特産品をつくる。そのためには、まずは趣旨に賛同してレモンを育ててくれる人を増やすこと。植えるのは個人宅の庭(鉢植えでもよい)、会社、施設、どこでもよい。苅谷さんたちはレモンの苗木を、通しナンバーの入ったプレートとともに販売した。プレートだけの購入も可。売り上げは活動費にあてる。苗木は順調に売れ、プレートのナンバーはすでに1600を超えた。

 活動が始まってからはさまざまなメディアに取り上げられ、運動は広く知られることになった。地元のデパートが協力してくれたことも大きかった。 2016年には初めての「泉北レモンフェスタ」を開催した。泉北レモンやレモンの苗木、泉北レモンを使った商品を販売するほかレモンを使ったワークショップも実施。レモンを介した住民との交流の場となり、大盛況。以後毎年、泉ヶ丘駅前で開催している。

 レモンの植樹や鉢植え設置箇所も街の随所に広がった。団地、マンション、自治会、デパート、駅前の広場、歩行者用デッキ、そして学校等。泉北郵便局は開局100周年記念として植樹を行なった。三原台中学校は創立50周年で中庭に植樹をした。



ふるさと納税の返礼品に

 「泉北をレモンの街に」「レモンを泉北の特産品に」、その目標に向かって苅谷さんはパワフルに歩み続ける。
 2017年、苅谷さんは「準農家」となる。準農家とは小規模な農地でも農家と認められる大阪府の制度。レモン農家として活動に本腰を入れ始めた。「泉北レモン®」は堺市南区で収穫した安全・安心のレモンとして商標登録、2019年には泉北レモン生産出荷組合を設立した。

 2019年、第3回さかい市民活動協働大賞受賞。2021年には法人格を取得、「一般社団法人 泉北レモンの街ストーリー」となった。そして今年4月1日から、泉北ニュータウンのそばにある農業公園「堺市立フォレストガーデン」の指定管理者に。活動はいっそうの広がりを見せている。

 苅谷さんは独自の「おみやげ三原則」を唱える。泉北の場合は
1.泉北で作られたもの、育てられたものであること
2.泉北で加工されたものであること
3.パッケージのどこかに「泉北」の文字が入っていること
 これらの条件を満たす泉北レモンの加工品としてフロマージュ、マーマレード、はちみつ、クラフトコーラが誕生した。フロマージュ、マーマレード、はちみつは堺市のふるさと納税返礼品になっている。地元の洋菓子店やベーカリーとのコラボ商品として泉北レモンを使ったケーキやパン、ビールなども考案され、人気を呼んでいる。

 「レモンの花はすごく甘い香りがするんですよ。街全体がこの香りに包まれ、駅を降りた人を迎えてくれたらどんなに素敵か・・・」レモン愛たっぷりに語る苅谷さん。「10年先、50年先を見すえると、まだまだ始まったばかりです」。
 苅谷さんのこれからの活躍、そして泉北ニュータウンの未来に、期待大だ。


苅谷さん(前列中央)を囲んでみんなで記念写真
〔2022.9.18〕