三丘同窓会

三丘アカシアトークカフェ第5回開催/堀庭裕平さん(高67回)「空手演武」
 2019年12月21日14時から、三丘アカシアトークカフェ第5回が開催された。
 今回は高67回・堀庭裕平さん(写真右)に空手・形(かた)の演武を見せてもらうとともに、空手を始めたきっかけや高校時代のこと、空手を見るときのポイントなどを話してもらった。参加者は48名。

 堀庭さんは4歳から空手を始め、小学1年生で全国大会で優勝したのを皮切りに、何度も全国大会で優勝、高校時代は国民体育大会、世界大会ジュニアの部、インターハイなどで優勝、2018年には世界学生空手道大会で優勝した。中学校を卒業したときから全日本強化選手に選ばれている。現在は神戸大学大学院修士課程在学中。

空手を始めたきっかけ 

「空手を始めたきっかけは、武道が好きな祖父の勧めで兄が近くの道場へ空手を習いに行き、自分もついて行っていたこと。横でまねをしているうちに習うようになった。4歳で習い始めて1か月で昇級テストを受けた」そうである。
 その初めての昇級テストの動画を見せてもらった(左はその1シーン)。会場から思わず「かわいい〜」の声が。

 一緒にテストを受けた子どもたちより年下だったが、結果は2階級昇級。その後も2階級ずつ昇級したそうだ。別の昇級テストの動画では、1人だけ大人が試合でする形の演武を見せ、終わったあと審判の協議になったが、結果は昇級。そして小学1年生のときには全国大会で優勝した。

負けず嫌いでのめり込む
 ところが「次の小学2年生のとき、初めてプレッシャーを感じて負けてしまい、ベスト16で終わった。このときとても悔しくてもう絶対に負けたくないという負けず嫌いの気持ちが芽生え、空手にのめりこんでいった」という。その結果、次は2連覇。5年生、6年生ではまた優勝できず、それが悔しくて次の年には中学1年生から中学3年生までの大会で、中学1年生ながら優勝したそうだ。
 「そういう負けず嫌いの気持ちで空手を続けてきて今にいたっている」と話す。ちなみにその前の年に中学3年生だったお兄さんが優勝していて、兄弟連覇は初めてだと話題になったそうだ。

高校時代のこと 

 高校へ入るとき、私立の空手の強豪校から誘いがあったが、三国丘高校に入りたいという気持ちが強かった。空手道部がないので、空手はやめることになると思ったが、勉強をとって三国丘高校に進学した。
 ところが入学式の田中滿公子校長先生の挨拶のなかで三国丘高校は校訓として文武両道を掲げていて、8〜9割の生徒が部活動に所属していると聞き、それならばと体育教官室に行って相談したところ、柔道部の顧問の夜久芳弘先生が「やる限りは途中で投げ出さず3年間やりきれよ」と、柔道部に籍をおいて空手をさせてもらえることになった。

空手より勉強を選んだはずが
 勉強したいと思って入学したにもかかわらず、学年が上がるにつれて、全国大会、東アジア大会、アジア大会、世界大会と、生活のほとんどの時間を空手に費やすこととなり、その結果高3の時には、卒業できるかわからないと言われるほど成績が落ちてしまった。でもなんとか大学にも合格でき、空手も高3の時にインターハイでも優勝できて、「うまくいった形」で高校を終わることができた。

 高校時代はそれこそ空手ばかりしていたので学校行事にもほとんど参加できなかった。グアムへの修学旅行にはどうしても行きたいと思っていたが、国民体育大会の試合の日と重なってしまった。「その時は2グループに分かれて出発することになっていて、僕のクラスは最初の方だったのだが、一生に一度の修学旅行、絶対に行きたいと思って担任の中野祐奈先生に相談したところ、校長先生に掛け合ってくれて、後発のクラスに混じって行くことができました」と言う。お話の後はいよいよ演武を見せていただく。

迫力満点の演武披露! 


「スーパーリンペイ!」という腹の底から出る迫力のある声で演武が始まると会場の雰囲気ががらりと変わり、緊張感に包まれた。
 話をしているときはたいへん柔和な雰囲気の堀庭さんが、一瞬で顔も声も体の端々まで厳しく鋭い様子に変わった。隙のない一流の武道家だとまざまざと感じさせられた。
 動くたびに空気を切る音がする。技の切り返しのときの目にもとまらない速さ、技を決めたときの力強さ、鋭く重い声に圧倒され、まるで金縛りにあったように、みんな息を殺して演武を見つめていた。演武のスペースと観客席の間はほとんど距離がなく、彼が蹴った足が顔のすぐそばを通る人も。これほど近くで見られることはまずないだろう。終わると感動のため息と拍手の嵐。
 このあと、ひとつ動画を見てから、また演武(クルルンファ)を見せてもらった。

空手の見所三つ

 次に空手の見所を説明してもらった。
 ポイントは三つあって一つ目は迫力。音や動きの速さ、体がダイナミックに動けているか、こういった点がとても大事になるそうだ。まず道着が擦れる音。うまい選手は技を出すだけで、相当道着の擦れる音が鳴るとのことだ。実際に見本を見せてくれたが、勢いよく手を前に突くだけで、何かにあたっているわけではないのにバシッと音がする。また技がうまく決まると、袖や足の裾の部分がはじける音も鳴るそうだ。
 次のポイントはゆっくりとした動作。「ゆっくりとした滑らかな動き、緩急のある滑らかさをしっかり表現できているかということが重要。外国人の選手は特にゆっくりした動作が苦手だ」そうだ。
 もう一つ大事なのが強弱。「滑らかな動きばっかりでも飽きる。ゆっくり入っているけれど後で『バシッ!』(実際に技を見せながら)と動く。そうすると、すごいパワーがあるように見える。そういう強弱をうまくつけることができるか。技の正確さなどが分からなくても、ゆっくりした動きの後の勢いのある動き、こういうところを見ていただけたら、オリンピックの時に楽しんでいただけると思う」とのことだ。

オリンピックについて
 「ところでオリンピックを見ても知らない選手が出ていてもあまり面白くないでしょう。本当は自分が出られたら一番良かったのだけれど、日本のルールで、オリンピック選考レースには今の日本人で世界ランキングの上位2名しか出ることができません」と堀庭さん。
 「今、僕は日本で5位、世界ランキングで14位。世界ランキングではオリンピックを目指せる位置だが、日本独自のルールでは東京オリンピックには100%出られない。その先のフランスのオリンピックでは、空手が採用されるか分からないと言われているが、もし採用されたらそっちを目指したい。フランスのオリンピックで空手が採用されたら、そのときは応援してください」と話した。みんなから大きな拍手が。

 

「奥ゆかしいが精神力が素晴らしい。努力は嘘をつかない」

 演武の後、全日本のジャージに着替えた堀庭さんとともにお茶とお菓子を楽しみながら2018年の世界学生空手道選手権の決勝の動画を視聴するなどした。
ここで高3のときの担任の山脇龍郎先生にお話をうかがった。


 「高1のときアジアで優勝、高2でスペイン・マドリードで高校生世界一になったので、優勝したことをみんなの前で披露しようということになったのだけど、1年2年のときの担任の中野先生が、『堀庭君ねぇ、みんなの前で言われるのはあんまり好きやないから、やめといてっていうかもわかりません』と言うぐらい、すごい奥ゆかしいタイプだった」そうだ。
 「高3の夏の三者懇談でもう空手は引退と思っていたら、『秋も冬もやります』と。『もういいんちゃうの』と思わず言ってしまったが、断れるような世界ではないとのことだった。大会もそうだが合宿が鬼の合宿で厳しくて、合宿中はまったく勉強ができない。本人は勉強が遅れていることはわかっているので、合宿前に夜も寝ずにガーと猛勉強して、寝不足で合宿に行っていた。大変だったろうと思う。すごい精神力やなぁと思った。最後にみごと神戸大学も受かって努力は嘘をつかないということを彼が結果で示してくれた」と話してくださった。
 山口智子元校長先生からも「普通文武両道といっても、同じ学校で、文の代表と武の代表は別々の生徒というのはよくあるが、堀庭さんは一人で両方を実現しているので、ほんとうに素晴らしい」とお話しいただいた。

 参加者からは「一等席で見学させていただき感動しました」「解説もしてもらったので、オリンピックも楽しめそう」「世界レベルの演武が間近で見られて感激した」など感想を聞かせてもらった。ご本人は「こんなに長く話をするのは初めてなので、演武よりも緊張しました」とのことだった。


道着姿の堀庭さんを囲んで記念写真


当日見た動画(YouTubeで見られます)
(1) [Kata, Karate]-Tradition meets modern #1 空手・形編
https://youtu.be/Vnea9lQLp0A  空手・形(かた)のルールを説明した動画
(2)【ドキュメント65ー祝 大学空手世界一!世界大会の様子を取材 空手道部・堀庭裕平選手】https://youtu.be/2hwh0TF-K-4
 インタビューや、練習や試合の様子などがまとめられている。
(3)【2018 FISU WORLD UNIVERSITY KARATE CHAMPIONSHIP - Male Kata Final】 https://youtu.be/pmsNOsp-1IY
 2018年度世界学生空手道選手権の決勝 解説付き


 
(2020.2.13)