三丘同窓会

高41回・石水毅さんらが世界初の快挙、「ペクチン」を作る酵素を発見
 立命館大学生命科学部准教授の石水毅(たけし)さん(高41回)が率いるチームが、昨年世界初の快挙―「ペクチン」を作る酵素の発見―を成し遂げて話題を呼んだ。

 植物が重力に逆らって直立できるのは、多糖類で形成される丈夫な細胞壁のおかげだが、この細胞壁の主成分のひとつが「ペクチン」である。
 ペクチンは細胞壁と細胞壁をくっつける糊の働きをする。日常生活でもゲル化剤や増粘多糖類としてジャムやゼリーに、また牛乳と混ぜるだけでデザートができる食品などに使われている。
 ペクチンの構造は約30年前に判明しているが、糖類の中で最も複雑な構造をしているので、どのように合成されるのかはわかっていなかった。ペクチンの生合成には糖と糖を結合する糖転移酵素が関わると考えられているが、この糖転移酵素の活性を生化学的に検出することが困難であった。

 石水さんらはその糖転移酵素の活性を測定する実験方法を独自に構築し、シロイヌナズナ(ぺんぺん草)を用いてペクチンの生合成にかかわる糖転移酵素PRT1~PRT4を同定した。これらの酵素は植物独自の新たな糖転移酵素ファミリーと認められ、GT106の番号が付与された。このGT106ファミリーは動物や水棲植物にはみられず、陸上植物とその祖先とされる車軸藻類のみに存在することから、ペクチンの生合成が数億年前の植物の地上進出の鍵をにぎる仕組みであることが示唆された。

 この研究成果はペクチン生合成の仕組みの解明に向けての新たな扉を開いたことから、植物糖鎖研究におけるブレイクスルーといってよく、イギリスの学術誌『Nature Plants 9月号』に掲載され、研究室のメンバーが撮った写真(ペクチンをたくさん含むオクラの写真)がその表紙を飾った。また朝日新聞やヤフーニュースなどメディアでも取り上げられた。
 ペクチンをたくさん作る植物は成長が速いため、これを制御することで植物の成長を速めたり収量を増やしたりできる可能性や、また新たな性質をもつ医薬品やゲル化剤の開発も期待されている。

 石水さんらが研究を始めて、意味のあるデータを得られるまでに19年かかったそうだ。「この研究は、アメリカ、ヨーロッパなど多くの研究室で1990年代から進められてきたものですが、難易度が高く、他のグループは途中で諦めてしまいました。地道に研究を続けられたことが成果につながりました。」と石水さんは語っている。

 
(2019.2.2)