三丘同窓会

総務大臣から感謝状/救急医療のパイオニア 高21回・横田順一朗さん
  堺市立総合医療センター副理事長でわが国救急医療のパイオニアといわれる横田順一朗さん(高21回)に3月、消防救急制度への多大な貢献により総務大臣から感謝状が贈られた。2005年には救急功労者・大阪府知事表彰、2014年には救急功労者・総務大臣表彰も授与されている。

病院前救護ー救急隊員の活動のレベルアップに貢献
 傷病者を医療機関へ搬送する間に救急隊が行う救急救命措置等の質を保証する取り組みをメディカルコントロール(MC)体制といい、隊員の教育・研修や、実際に処置を行う際の指示や助言などを行う。横田さんは日本臨床救急医学会の代表や全国MC協議会連絡会の幹事、消防庁の検討会の委員などを務めて、MC体制の整備を進め、救急業務の高度化や全国の救急救命士の育成・レベルアップに長年寄与してきたことが、今回の表彰となった。

泉州・堺 2つの救命救急センター開設に寄与
 阪大医学部出身。米国コーネル大学医学部研究員、阪大医学部助手・講師などを経て、1994年に泉佐野市りんくうに開設された大阪府立泉州救命救急センター初代所長を務めた。その後市立堺病院が2015年に新築移転された堺市立総合医療センターに併設する救命救急センター開設に尽力。泉州地域の三次(重症患者対応)救急を担う3つの医療機関のうち2つの開設を成し遂げた。これにより、周辺の医療機関の救急診療レベルも向上し、泉州、堺両救命救急センターは救急医療のモデル的存在といわれている。

 三次救急医療機関は国の方針として1975年には人口100万人に1カ所、2012年には50万人に1カ所、現在では30万人に1カ所を目標に整備が進められている。大和川以南の泉州地域には長い間、三次救急医療機関はなく、重症患者は大阪市などに搬送されていた。堺市・高石市(人口はあわせて約90万人)を管轄している堺市消防局では過去10年を見ても毎年350人前後の重症患者が近隣の救命救急センターに搬送されていた。堺の救命救急センターができたことにより、重症患者の平均搬送時間は19分43秒から10分04秒に短縮され(2017年12月堺市公表資料より)、一分一秒を争う重症患者の治療に大きく貢献している。

わが国の外傷診療に指針
 また救急診療では、適切な処置を施せば助かると推定される交通事故などによる外傷死亡も多く、2000年に日本救急医学会と日本外傷学会では外傷初期診療のガイドライン(JATEC)作成とそれに準拠した医師の研修コースの開発を決定した。横田さんはガイドライン作成の責任者を務め、研修コースの開発・普及を中心となって進めている。2002年4月の開始から2017年の3月末までにJATECコースを受講した医師は13,524名にのぼり、日本で事故にあった患者さんが病院で適切に治療されて歩いて退院できるのは、JATECコースの普及によるところが大きいといわれている。日本外傷学会の代表も務めるなどわが国の救急医療をリードする一人である。
 
(2018.5.5)